南蔵院 林住職のいい話 「約束のゴール」
2002年 日韓共催ワールドカッップ時の話です。
和歌山県ではデンマーク選手が合宿していました。
ワールドカップに出場する殆どの国のチームは、戦術がバレるとの理由でチームの練習は非公開でした。
ところが、デンマークのチームの監督のオルセンさんという人は、
「キャンプ地を提供してくれた和歌山の人たちのために、何でもすることが私達の仕事だ。
それは試合に勝つことよりも大切だ」
と言って、自分たちの練習を見せるばかりでなく、見学に来ていた少年たちをグランドに招き入れミニサッカーゲームをやったりしてくれました。
また、練習やゲームが終わったあとは、サイン会や握手会も続けてやってくれました。
オランダのチームには、トマソンという世界的に有名な選手がいます。
そのトマソン選手がサイン会をしていました。
そこにはサインをもらおうとたくさんの子供達が並んでいます。
順番が来てトマソン選手の前に立っても何も言わず、モゾモゾしている少年がいます。
トマソン選手が気になって「どしたの?」と少年に聞きました。
そうしたら少年が一枚の紙切れを出して、(それは学校の先生に書いてもらった英語の手紙でした)トマソン選手に渡しました。
「僕は小さい頃に病気にかかって、口と耳が不自由です。
耳は聞こえません、話すことも出来ません。
でも、サッカーだけは大好きです。
そして僕はトマソン選手が大好きです」
とその手紙には書いてありました。
トマソン選手はそれを見てニッコリ笑って
「君は手話が出来ますか」
と手話で語りかけました。
しかし、手話は世界共通ではないので、デンマークの人の手話は日本人には通用しません。
それが分かるとトマソン選手は横に立っている通訳の人に
「僕は彼とこれから筆談をしたいので手伝ってください。
そして、後ろに並んでいる人に、彼と話す時間をくださいと、ことわりを入れて下さい」
と言って少年との筆談が始まりました。
「君はサッカーが好きですか?
デンマークを応援してくださいね!」
と、トマソン選手が書きました。
少年は
「どうして、トマソン選手は手話が出来るのですか?」
とたずねました。
するとトマソン選手はこう言いました。
「僕にも君と同じ試練を持つ姉がいます。
彼女の為に僕は手話を覚えました。
試練は君にとって辛いことだと思いますが、同じように貴方の家族も試練を共有しています。
君は独りぼっちじゃないことを分かっていますか?」
と優しく少年に語りかけました。
そして少年が黙って頷くと
「分かっているならオッケー!
君にも僕にも、そして君のお母さんにも・・
それを乗り越える勇気を持ってください」
と言いました。
そうしたら横で聞いていたお母さんは、もう泣き崩れてしまいました。
そして、トマソンは大変なことを口に出します。
「僕はこの大会で、君のために一点を必ず取ります。
その姿を見た君が、これからの人生を頑張れるように祈っています」
少年は
「ハイ、頑張りますから、試合頑張って下さい」
と言って会場をあとにしました。
トマソン選手はこのワールドカップで4点も取りますが、あのベッカム選手が率いるイギリスに負けてしまいます。
オランダチームが帰国する前の日に和歌山で、お別れパーティが開かれました。
そうしたら、トマソン選手の方から少年を見つけて、自分のところに呼んで、世界の超有名な選手が、一人の少年、無名の少年を1人の人間として大切に扱い言葉をかけます。
「せっかく応援してくれたのに負けてしまってゴメンなさい。」
とあやまっています。
すると少年が
「負けたけど、とてもカッコ良かったです。
約束どおり点を取ってくれて僕はとっても嬉しかったです」
と筆談で渡しました。
するとトマソン選手が、
「僕から君に言えることはこれが最後です。
君には前にも言ったとおり、試練が与えられている。
それは神様が決めたことだから今からは変えられない。
神様は君に試練を与えたけれど、君にもちゃんと、
ゴールを決めるチャンスを与えてくれるハズです。
そのチャンスに必ずゴールを決めてくださいね」
と言って最高の笑顔で二人並んでカメラに収まりました。
あなたは悔いのない人生を過ごしてきましたか?!
「旅立つ日」
必ず明日を迎えることを約束された人は、この世に誰一人いません
今、出来ることを大切にしまよう!
あなたが虚しく過ごした今日という日は
昨日亡くなった方が、あれほど生きたいと願った明日
一度きりの人生
何かやり忘れていることはありませんか?
子供の頃に描いていた夢は今はどうなっていますか?
諦めきれない夢はありませんか?
夢に向かって!
最後まで読んで頂きましてありがとうございます。