南蔵院 林住職のいい話 「ボロボロの貯金通帳」
私の家は、食べたい物を食べた記憶がなく買ってもらいたい物も買ってもらった記憶がないくらいとっても貧しい暮らしでした。
でもとっても明るい両親だったし、私に嫌な思いをさせたくないという気持ちも分かっていたので、グレることも人に苛められることもなく、ホントに豊かな気持ちで成長してきました。
今の主人と出合って結婚の約束をしましたが、主人の家も私の家に負けないくらい貧しい家でした。
双方の家が貧しいので結婚式の費用や所帯道具の費用は、自分達で用意しなくてはならないと思い、3年間くらいデートのお金も節約してようやく工面できました。
主人が初めて私の家に来て
「お嫁に欲しい」
と言ってくれた時、両親は何の反対もせず
「素晴らしいお婿さんに出会えて嬉しい、娘を幸せにして下さい」
と喜んでくれました。
その時お父さんが
「結婚式の費用や所帯道具を買うお金はあるのか?」
と聞かれたので、それは用意したと答えると
「ちょっと待ちなさい」
と言って古いタンスの中からボロボロの貯金通帳と印鑑を持ってきて、
「これは俺とお母さんがお前の結婚式の為に一生懸命貯めたお金だ。これを使って欲しい」
と差し出しました。
やっぱり家にどのくらいの貯金があるか気になるじゃないですか。
私、最初に最後に書かれてある残高の数字を見たんです。
そうしたら、この家にこんなお金があったのか・・・
今まで食べたいものも食べずにいたのはなんだったのか!
そりゃ、他の家の人から見ればたいした金額ではないけれども、
84万円という数字が書かれていました。
そして横を見てビックリしたのは一回も出金した跡がありませんでした。
そして今度は大声で泣いてしまいました。
何故なら、私が見てビックリしたのは1回1回の入金の金額が、
150円以上の日が一度もありませんでした。
30何円とか、70何円とか小まかい数字がずら~~っと並んでいました。
そして最後の数字が84万になっているのを見て私、
これは使えないと思いました。
主人にその通帳をすぐに見せました。
すると主人も
「お父さん、お母さん、このお金は我々が使えるようなお金ではありません。
お父さん、お母さんが自分の為に使ってください」
と言って返したけれども、父も母も受けとりません。
押し問答の末
「じゃあ、孫のための貯金として、もう少し楽しませてもらおうか!」
と言うことになりました。
長年経って、両親もすでに亡くなったある日主人が、
「あの時見せてもらった貯金通帳を覚えているか?」
と言うので
「覚えているよ」
と答えると
「お父さん、お母さんの温かい気持ちがつまったあの通帳は我が家の家宝にしよう・・」
と、実家に行き探してみたけど見つかりませんでした。
自分たちの子供に、あの通帳を見せて
「お前たちは、どんなに素晴らしいお祖父ちゃんとお祖母ちゃんの
もとに生まれてきたのか・・・分からせてやれたのに残念だなあ~~!」
と今でもとても悔しがります。
あなたは悔いのない人生を過ごしてきましたか?!
「旅立つ日」
必ず明日を迎えることを約束された人は、この世に誰一人いません
今、出来ることを大切にしまよう!
あなたが虚しく過ごした今日という日は
昨日亡くなった方が、あれほど生きたいと願った明日
一度きりの人生
何かやり忘れていることはありませんか?
子供の頃に描いていた夢は今はどうなっていますか?
諦めきれない夢はありませんか?
夢に向かって!
最後まで読んで頂きましてありがとうございます。