帰ってくるな
魂が震える話
ゆう けい著より
高校を中退し、料理の世界に入った。
![親子喧嘩 親子喧嘩](swfu/d/auto_Vj8qrE.png)
高校を辞めるときは、親父と殴り合いのケンカをした。
「二度とそのツラ見せんな!」
半分勘当されたような状態になった。
悔しくて、住み込みで働きながら、必死に料理を覚えた。
右も左もわからなかった俺は、コテンパンにしごかれた。
何度も辞めて帰ろうとしたがその度に親父の言葉を思い出し、思いとどまった。
俺には帰る場所はない。
後ろに道はない。
だから、必死になって食らいついていた。
![板前 板前](swfu/d/auto_LALtIS.png)
8年経った頃には、ひと通りこなせるようになり、店長を任された。
店長としての初日、8年ぶりに親父に会った。
社長が俺の両親に連絡を入れていたらしい。
親父は、相変わらずぶっきらぼうで
「おまかせで、なんか適当に出してくれ」なんて言っていた。
「はい。かしこまりました」と返事をして自分が一番好きな、手の込んだ料理をコースで出した。
親父は母さんと一緒に黙々と食べていた。
「上手い」とも言わず、帰り際に「じゃあな」と一言。
あっさり帰っていった。
こんなものか。
少しがっかりした。
![料理 料理](swfu/d/auto_ZmwHEk.jpg)
後日、母さんから手紙が届いた。
「先日はどうもごちそうさまでした。
とても美味しかった。
店長就任も素晴らしいわね。
心から、祝福しています。
お父さんは、あの性格だから貴方には何も言っていないと思うけど、社長さんから連絡をもらったとき、すごく上機嫌で何を着て行こうかって、うるさかったのよ。
![親父 親父](swfu/d/auto_J9ekDq.png)
それから帰り道、泣いていたわ。
あんな上手い料理を食べたのは初めてだって。
よかった……よかった……つて。
たまには顔を出しなさいよ。
本当は、ずっと心配していたんだから。
お父さん、あなたの働いているお店の前を
『ドライブ行こう』って言って、何回通ったことか……。
お母さんもそうだけど、あなたのことを一日だって考えなかった日はないんだから。
またお店にも食べにいくからよろしくね。
母より」
![うれし泣き うれし泣き](swfu/d/auto_X4bJJX.png)
涙が止まらなかった。
高校を中退した俺が、仕事でも逃げ帰ってくるんじゃないかと心配し、あえて突き放してくれたんだ。
ありがとう。お父さん。お母さん。
あなたは悔いのない人生を過ごしてきましたか?!
「旅立つ日」
必ず明日を迎えることを約束された人は、この世に誰一人いません
今、出来ることを大切にしまよう!
あなたが虚しく過ごした今日という日は
昨日亡くなった方が、あれほど生きたいと願った明日
一度きりの人生
何かやり忘れていることはありませんか?
子供の頃に描いていた夢は今はどうなっていますか?
諦めきれない夢はありませんか?
夢に向かって!
最後まで読んで頂きましてありがとうございます。